第4章 はしやすめ
「、支度を終えたら来い。」
と紅炎様に言われ、部屋にそくささと戻った私は直ぐに着替え、朝餉、という程でもないが軽食を取って紅炎様の部屋に戻ってきた。
扉を2回ほどノックし、返事を待ってから入る。
「紅炎様、」
と呼びかけるも紅炎様は仕事をしておられ、こちらに向く素振りも見せない。うーん、紅炎様に言われて来たのに、なぁ…。と思いつつ仕方ないので扉の横で何でもないですという顔で紅炎様を待つ。それは何分かかったか、私がぼーっとし始めた時、やっと紅炎様に呼ばれたのである。
「、」
「はい。」
机で隠れて気づかなかったが、紅炎様は既に着替えが済ませてあり、幾重にも重ね着されたそれをきっちり着こなしていた。あれ?私がここ出てから戻ってくるまでにそんな時間無かった筈なのに、着るのに時間がかかるこれを着て、仕事に耽っているだなんて、、、流石紅炎様だ…。なんて考えていれば紅炎様に着いてこいと合図された。
私の横の扉をから出る紅炎様の斜め後ろにつき、何処に行くのかと思案した。
沢山の女官や宦官、武将達と挨拶を交わしながら着いたのは地下牢に続く扉。はて、何故此処に…?真逆昨日の失態で罪に値するから牢に入れと?何も言わずに扉を開けて階段を降りていくその背中から真意は読み取れず、ただ恐怖に戦きながらついて行った。
たまに呻き声が聞こえるものの、基本的に静かな此処は足音がよく響く。それが私の死刑宣告の様で本当に怖い。遂に止まった紅炎様に私も合わせれば、紅炎様は看守と話していることが伺えた。
「紅炎様、お待ちしておりました。」
跪く看守に「いい」と顔を上げさせ、「コイツと話さてくれ」と言った。コイツ?と牢の中を見れば、暗くて分かりにくく、辛うじて人がいる事が分かった。
「おい、起きろ!」
看守が警棒らしきもので中をつついた。「うーん、」というその声は聞き覚えがあって更に謎が増えた。
「紅炎様がいらしたんだ、早く起きろ!」
看守がもう一度そう言うと、起きたのか、ガシャンと牢に捕まってこちらを見る人。
「あ、」
「さん!!おはようございます!いい朝ですね!」
嗚呼、成程。聞き覚えがある筈だ。昨日会ったし、なんならコイツに被害を被ったから。
「宇航。」