第4章 はしやすめ
__元来キュウべぇ、基インキュベーターという個体には感情という概念は必要無いものだった。
だが、一緒に旅してる時に、なんとなく術者と対象者の気持ちをリンクさせる魔法を作ったことがあった。試す相手もいないのでキュウべぇにその魔法をかけた。私の感情というものの起伏は中々大きいのでキュウべぇには全部それがたれ流されたが、私には一切キュウべぇから感情が伝わってこなかった。
なるほど、感情が無いって、ある者から見れば辛いな、なんて他人事に思った。一方キュウべぇは押し寄せてくる感情というものに目を白黒させていた。
その後からだ。キュウべぇが時々人間らしくなったのは。
今はその魔法をかけていないが、キュウべぇにはあの時のことが結構印象深いようだったし、忘がたいようで、感情というものに前とは違った興味を持つようになった。
完全には理解することはできなかったみたいだが、前よりマシになったと思う。
「どうしたんだい、いきなり黙って。」
「んーん、なんでもない。」
元から頭のいい生命体だから人間に近くなるのも時間の問題だろう。人間みのあるキュウべぇなんて想像できないな。考えるだけで笑ってしまいそうだ。
「何か失礼なこと考えてないかい?」
「い、イイエ、ナニモ。」
「ふーん。」
そうして下らないことを考えていれば仕事部屋に戻ってきた。さーて次の仕事を片付けなきゃなー。
_
ぼそぼそ。ぼそぼそ。囁く様に紡がれる言葉は自分達にしか聞こえない。自分達しかいない空間なのにわざわざ小さい声で話して、まどろっこしい。
「して、第一皇子の従者の様子は?」
最近の話題はこの話がもちきり。一年以上消息が絶たれていた第一皇子の従者である、なんといったか、ああ、、が半年前に帰ってきたのだ。
彼奴に興味があると彼の方が仰るので調べていた矢先に消えたから勘づかれたと思ったが違ったようだった。
あの小娘、我らも知らない魔法を使う。魔装じみた変身はまるで金属器使いの様で不可解だった。マゴイの量も桁外れ。あんな小さい小娘にどんな大きい秘密が隠れている事やら。
まぁ、それも我らなら暴くことができる。
全ては 計画書 のままに_