第4章 はしやすめ
嫌な予感しかしないそれを必死に押し返そうとすれば唾液でどんどん溶けていく。焦ってどうしようかとしどろもどろになっていれば、他を犯されていく。
歯列をなぞったり、舌の裏側をついたり。経験が少ない私ですら分かるくらいそれは上手いし、気持ち良かった。心は気持ち悪いままだが。
そうして気持ち良さで抵抗できなくなった頃には無意識にその薬をゴクリと飲んでしまっていた。それを確認した李徴は口を漸く離した。
「ぷはっ...はっ、はっ」
「はは、甘いですね。」
余韻に浸るように唇をペロリと舐められれば頭がポーっとした。侍女用の服の前の合わせが引っ張られ、胸が露になる。抵抗しなきゃいけないのに手に力が入らない。
「さん、可愛い...♡♡」
李徴が何か言ってるが、入ってこない。体が熱い。
あつい。
ほでっている。
このあつさからぬけだしたい。
「ふふ、楽になりたいですよね。僕を求めれば、楽になれますよ。」
あまったるいこえがみみをしはいする。ゆだねたい。ゆだねて、らくになりたい。
「ゆーは、ん、らくにし」
て、そういう前にバン!と音がしてハッと我に返った。私は今、何を口走ろうと...!?
混乱した頭を整理していれば、唯一の入口である襖が吹き飛んだ。その犯人は私が敬う紅炎様だった。
紅炎様は半裸になっている私と、それに馬乗りになっている宇航を見て静かに魔装したと思えば、物凄い速さでこちらに来た。
だが李徴は先程の襖の様に吹っ飛ぶことはなかった。何故なら彼が防壁魔法で攻撃を防いだからだ。
だが紅炎様のアシュタロスは炎の剣がある。防壁魔法では勝てる訳も無かった。あっという間に着いた決着に唖然としていれば、紅炎様は李徴にトドメを刺そうとしていた。
「こ、紅炎様!待ってください!」
服を整えて慌てて呼び止める。
「なんだ。」
「流石にトドメを指すのは...」
「何故だ。」
紅炎様がジロリとこちらを見やる。その目はもうとてつもなく怖かったが怯んではいけない。
「彼はスパイではないです。それに私に境遇が似てるんです。他人事には感じなくて...!」
「.....」
黙って宇航に向き直った紅炎様は再びトドメを刺そうとした。