第4章 はしやすめ

「宇航...。」

「あ、ご飯、お持ちしましたよ。半日寝ていらしたので、そろそろお腹も限界かと思いまして。」



私はここに監禁されているというのに、それを気にせずいつも通りに話す彼。やはり彼はスパイだったのか...。少しの間だが一緒に仕事してきた仲間であった宇航がスパイだった、その事実は私の中に中々強い衝撃を受けさせた。悲しくなって目を伏せれば、「どうしました？」と聞かれた。




「宇航、君はやっばり...」

「...ああ、その事ですか。...ははは」



感情を感じさせない乾いた笑い。どんな気持ちでいるのかさっぱり分からず、少し怖いと思ってしまった。



「...」

「ははは、あぁ、いや、すみません、笑ったりなんかして。さんがとても面白いのでつい。」

「.....否定は、しないの？」

「...隠していたつもりですもんねぇ。そりゃ吃驚ですよねぇ。」


私にゆっくり近づく彼。いつもの話し方に狂気が混じっていた。持っているご飯が乗ったお盆はカタカタと揺れている。


「僕、あの場にいたのに、ねぇ。」

「...？」

「あの、厨房に。」

「！」

「だから誰かが僕のこと怪しんで尾けてくるかなって思ったら、まさかさんだったとは。」


あははとまた彼は笑った。


「...君の意図が分からない。」

「...酷いなぁ...名前で呼んでくださいよ。折角 二人きり なんですし。」

「.....」



進まない会話とも呼べぬそれにイラつきを感じる。駄目だ、冷静になるんだ私。彼がそういう態度を取って、こちらのペースを乱すのが目的だ、！



「.....ああ、意図ですか？...意図、ねぇ...。.........さんは覚えてないんですか？」

「？」

「やっぱり。それじゃあ教えられませんよ。」


いやさっさと教えろや！！なんて流石に口に出せないので、頑張って平静を装う。そんな私を見て彼はニタニタと笑う。うん、気持ち悪い！



「本当に貴方は、残酷な人だ。覚えてないなんて、でも良いんですよ？僕は忘れませんから！」

「...ねぇ、貴方の、宇航の目的は煌？紅炎様？私への私怨？」

「はははははは。まぁ、そうですね、言うなれば、練紅炎とさんですかね、」



私達への私怨か.......