第4章 はしやすめ
正確な位置以外で蓋を閉めようものなら、陶器にヒビが入るというもので、まぁ毒が入っても分かるようにというものだ。そして件は案の定ヒビが入っていたという。
「ちょっと良いですか?私なら毒があるかどうかなら調べられます。もしかしたら誰かが知らずに中身を確認した可能性もありますから、皆さん落ち着いてください。」
そう言って銀を魔法で作って、器に入っている食べ物に触れさせてみる。すると、銀が変色した。
「!.........残念ながら、ビンゴですよ...。」
またもざわつく厨房。誰がやったんだ!?と誰かが言った。そしてまた誰かが言った。
.........宇航では?
確かにありえない話ではない。何故なら最近ここに来た上、出来すぎている所だ。皆よく出来る子だとは思っていたが、その心の内の何処かにはもしかしたら彼がスパイかも知れないと考えていたみたいだった。だが、宇航はとても良い子なのだ。とてもそうとは思えない。
だが、しかし、それを主観的に決めるのも良くない。ここは私が暗躍しようではないか。
「皆さん、落ち着いて。今回あったことはくれぐれも内密にしてください。」
「殿...!?何故そんなことを...」
「皆が皆、彼を怪しんだらボロが出ません。尻尾を掴む為にも、この事を知るのは、ここにいる私達と、狙われている皇子達のみにしましょう。」
「...な、なるほど!」
「流石殿!」
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そうして今回の毒騒ぎは静かに皇子達に伝えられた。
(にしても本当に彼なのかな?分からないし、犯人は早く捕まって欲しいからキュウべぇにでも監視してもらおうか.....ん?)
考え事をしていれば周りをキョロキョロとしている宇航がいた。その姿はこそこそとしていて、何かを隠しているように見えた。
これは、尻尾を掴むチャンス、かな?そう思って魔法で姿と気配を消し、そっと彼を追いかけた。彼が入っていったのは煌の宮殿から少し離れた路地裏の様な場所。
(明らかに怪しい.....)
更に尾いていけば、そこは行き止まりだった。しまった、嵌められた!咄嗟に後ろを振り返ると
そこには誰もいなかった。
なんだ、良かったと安堵から溜息を吐こうとした時、キュウべぇにタックルされた。