第4章 はしやすめ
宇航、と名乗るその男の年齢 は20歳前後だろうか、顔が小さく整っていて、身長が高い。足も長い彼は女からモテそうな要素しかなかった。...だが私は見た目よりも中身が重要と考える人間なので、航くんと握手を交わした後、子豪殿をちらりと見た。
「して、子豪殿。そちらも少しお時間はありますか?少しばかり気になることが...」
「そうでしたか、では宇航、君は.......」
子豪殿はあれこれと航くんに仕事を申し付けた。...そういえば子豪殿と言ったら優しさ反面のスパルタさで有名であったな。子豪殿はここで働く官吏の中でも立場が高いお方。ここで務める時、彼が教育係のようなものをやるそうだ。私は一応官吏兼従者的ポジなので、運良く侍女長が教育係になった。子豪殿程キツくはないが、まぁ、結構辛かったなぁ...。
なんてぼんやり物思いに耽っていれば子豪殿は話が終わったようで、宇航と離れてこちらに来た。慌てて宇航に手を振って、会釈されたのを見送ってから子豪殿に向き直る。
「殿、話とは...?」
「いや、ただ単に彼の能力が気になりましてね、」
見目が良いからって仕事ができなければ私は容赦なくクビにする。紅炎様の従者なのでそれくらいの権利は持ち合わせている。だが私とてそんな事を好き好んでやる訳では無い。だから子豪殿に聞いて、見込みがある又は能力が優れているなら子豪殿の目を信じ、良しとする。そうやって煌に貢献してきた。
だが、ただクビにするだけじゃない。クビにするにはそれ相応の責任というものがある。だから、それぞれに見あった職を提供している。彼にはそうなって欲しくないな。
「宇航の能力は中々素晴らしいものですよ。磨けば光ると思われます。筋は悪くない、と言うんでしょうか...」
「なるほど...。因みに出身や、ここに務める動機などはご存知で?」
「確か我が国の西側の村の出だそうです。動機は国の為に働きたい、です。」
「...。分かりました。子豪殿、貴重なお時間をありがとうございました。」
国の為に働きたい、その動機が引っかかるが、まぁ敵国のスパイならその内ボロを出すか、気付いたら消えることがあるから最始は様子を見るしかないかな。
数日後、彼の能力は本当に素晴らしいものだったと実感した。