第3章 本当のこと
「あ、開いた」
「!...!」
「おっと!」
キュウべぇの声に咄嗟に何かから避けると、私のいた場所は凹んでいた。この地面、アスファルトだよね...?と思いながら攻撃した主を見れば、そこにはめちゃくちゃ大きい蛇がいた。
「騒々しいお出迎えだね。」
「ね。キュウべぇさんきゅ。」
こうやって余裕ぶっこいてるけど、内心焦りまくり。流石にあんな大きい蛇を倒せるか不安だったのだ。さっきの壁をゆうに超える大きさの蛇はこちらをジロリと見る。こいつは真っ向から戦っても勝てないな。まずは
「様子見しなきゃね!」
指輪に魔力を込めて変身して飛ぶ。それを目で追う蛇、いや大蛇。そういえば蛇といえば、目はあまり良くなかった気がする。気配を察知するのは飽くまで舌。じゃあ舌引っこ抜くか?いや、あんな巨体どうやって...。大蛇の体が大きすぎて、恐らく舌もとても大きいものと思われる。さぁ、どうする?
ブンと叩きつけられる尾を回避し、適当に胴体に魔法を打ち込むも効かない様子。やはり正攻法じゃ無理だよね。
なんなら体を真っ二つにしてやろうか?いや、寝させよう。
「quieto −クイエート−
tranquillo −トランクイッロ−
spianato −スピアナート− 」
これら全部は安心する、落ち着くとかそういう魔法。これで眠気を誘う。大蛇の目は先程のギラついた捕食者のものではなく、トロンとした眠そうな目になった。
「もういっちょ!
ritardando−リタルダンド−」
だんだん遅く、これはシンプルに動きにくするため。そうしていればあっという間に大蛇はすやすやと寝始めた。
「ようし、舌を切り取るぞぅ!」
こんな木を切り倒すぞぅ!みたいなノリで言うことではないが、なんせツッコミ不在なのだ。仕方ない。
ん?キュウべぇ?コイツは人間じゃないし、感情も欠落してるから無理よ。
魔法で大蛇の口を開き、「dolce −ドルチェ−」と麻酔をかけて、いざ舌を切る。そして直ぐ様離れようとしたが、痛みによって目が覚めた大蛇が暴れた為に地面に打ち付けられた。
まずい、流石にこんな至近距離だったら目も見えるはず...!蛙の様に動けない私を大蛇は見下ろして、口を開けて食べようとした。
あ、死んだなこれ。