第3章 本当のこと
すんと嗅げば久しぶりに感じる貴方様の匂い。とても安心できる、心地の良い、匂い...。
「...っぐすっ」
「...?」
「いや、ずみばせん...。ちょっと、安心した、も、ので...」
ここ2年近く、紅炎様の傍にいないという期間はとても苦痛だった。貴方様の為になろうと旅に出たのに、貴方様がいないと嫌だなんて我侭なのは分かっていた。それでも、ずっと辛いことがあっても心の支えだった貴方様にはもう会えないかも知れないという気持ちで過ごす毎日は、本当に苦汁を舐める日々だったのだ。
「。」
「.....はいっ」
「俺の妃に、ならないか...?」
「えっっっっ.........」
紅炎様が何をおっしゃったか、意味が分からなかった。妃...?妃って...いや、聞き間違え、だよね?そうだよね?だって紅炎様には何人もの側室がいらっしゃって...
「が離れない、保証が欲しい。」
「いや、あの...」
「、お前は賢い。自分の気持ちや人の気持ちには馬鹿だが、俺はその賢さは買っている。それに、ずっと隣にいたお前が、いなくなるなんて考えられなんだ。」
「紅炎様、」
「いや、そうだな...、俺の妃になれ。」
頭がついていけない。どうして?私は賢くなんかない。それに、、、
「あの、紅炎様...」
「ああ」
「いや...あの、私、嫌です...。」
「は?」
私は紅炎様を慕っているが、それは恋愛のものではない。紅炎様を見たり、考えたりして胸がドキドキするのは、敬いの気持ちがあるから。そうだと思っている。
「紅炎様、それは一種の気の迷いです...。それに、私はこれまでずっと、紅炎様の傍で、貴方様の力になろうと頑張ってきました。ですが、それは恋慕ではなく、思い慕うだけの気持ちです。それに貴方様はこの国の第一皇子であらせられる。私なんかではなく、他国の姫様を娶るのが道理でございましょう?」
「...。」
「はい。.......っ!?」
今日は、時が止まるのが多すぎやしませんか、神様。
どうして私は、今、紅炎様に、口吸いされているのですか?