第3章 本当のこと
「...最初から聞いていなかったのか...」
「...はい、途中から、でした。」
私がそう返すと、紅炎様は呆れた様にハァ...とため息をついた。
「あの時は白瑛と、誰が結婚するか話していたんだ。紅明や紅覇はまだだろうな、と言った時に白瑛がお前はどうだろうかと言ったんだ。」
「...」
「俺はお前が嫁に貰われるなんぞ絶対に認めないのでな、は駄目だと言ったんだが、」
そう言って私の顔を覗き込む紅炎様。か、顔が近い...っ。
「とんだ勘違いをしていたな、?そのせいでこっちは仕事が大変だったんだぞ。何も言わずに出て行った誰かのせいでな。」
「うっ」
トゲのある言い方がとても心に刺さった。
「まぁ、月に一度届くお前からの書物や情報は助かったがな。」
が、紅炎様のそのお言葉に心がパァっと明るくなった。
私は紅炎様に駄目と言われたから、煌を出て、周りを見て学ぼうと思った。だがそれだと自分勝手だ。仕事をすっぽかす訳にもいかない。だから月一で煌に匿名で他国で得た情報を送っていた。
そう、匿名で送った情報を...
匿名で.............
「って、あれ私だってお気づきで!?」
「字で分かる」
なっ!流石紅炎様。字で分かるなんて...。というかバレてたのが恥ずかしい...。もう色々とキャパオーバーすぎて顔が熱い...。それをどうにかしようと頬に手を当ててマッサージする様に動かしていると、いきなり目の前が真っ暗になった。
「...ぇっ?」
いや厳密に言えば、先程まで1m位先で椅子に座ってらした紅炎様が、目の前にいらっしゃる、かな。ともかく私は紅炎様に抱きしめられていた。その驚きは凄まじいもので、私の口から出たのは声とすら判断できるかどうかのものだった。
「まぁ、何はともあれ、が無事で良かった。.....これから離れるなよ?」
「.....主命であれば。」
「ああ、命令する。
今後一切、俺から離れるな。」
「我が主の仰せのままに。」