第2章 懐かしい香り
「遠征中...?」
ご帰還なさるまでの期間は伺ってません。かぁ...。折角ここに来て勇気が出たのに...拍子抜けだ。...にしても何処に遠征しているというのか...。
コンコンと扉をノックして返事が返って来たのを確認してから扉を開ける。
「紅玉ちゃん...。」
「あらぁ?ちゃん?どうしたの?」
来たのは紅玉ちゃんのお部屋。本当はそう簡単に入っちゃいけないんだけど、まぁ、うん、大丈夫だろう。そこは気にしないようにしながら私は紅炎様が不在なこと、私はこれからどうすれば良いか分からないことを伝えた。
「うーん...そうねぇ...。お兄様は今お仕事中だから、そこに突然ちゃんが現れたら仕事に手をつけられないかも知れないわぁ。」
「そう、だよね...。」
「ええ、だから、私の元で従者をしない?」
「えっ!紅玉ちゃんの従者!?」
「そうよぉ。」
煌帝国に着いたら紅炎様に怒られて、出ていくと思っていたからそんなこと考えもしなかった。でも、私はここ1年以上いなかったのに、ここで何事も無かったかの様に過ごして良いのだろうか...。
「ちゃんが従者だったら私も嬉しいもの。ね?」
紅玉ちゃんは可愛く首を傾げてこちらに問いかけた。そんなこと言われたら断りずらいじゃないか。
「私で良ければ、紅玉様にお力添え出来るよう、精一杯努めさせていただきます。」
「もう、固いわよぉ~」
紅玉ちゃんはそう言うが、私はそういうところはしっかりしておきたいのだ。
でも、今日からは大変だし、疲れてると思うから、明日からね?それまで好きにして良いわよぉ。ちゃんのお部屋もちゃんとお兄様が毎週お掃除させてたし...使えると思うわぁ。
紅玉ちゃんから言われたことが頭を反芻する。
紅玉ちゃんに期限付きで従者になると誓った後、私は自分の部屋へと来ていた。自分の部屋なのに入るのにドキドキする。...まさか紅炎様が私の部屋を毎週掃除させていたなんて...。曰くいつ帰ってきても良いようにという事らしいが...。
本当に、
「貴方様の考えていらっしゃることは私には理解できません。
やはり私は従者失格なのでは...?」