第2章 懐かしい香り
「姫君、神官殿はお連れしなくても良いのでありますか?」
「良いのよぉ、「銀行屋」が任せろと言うのだもの。」
あの後みんなでさっと支度して撤収した。今は絨毯で煌帝国に帰るところだ。本音を言えば煌帝国に帰りたくないが、ここまでみんなと関わっておいて「じゃあ私は行きます~」とか言って抜け出すのは困難に等しかったので、もう腹をくくって帰ることを決めた。本当に帰りたくないし、結局その後煌を出ることになりそうなのでもう憂鬱の極みである。そんな私と引き換えに紅玉ちゃんは上機嫌であった。
「とにかく私たちは引き上げよぉ。早く陛下にバルバッド国の王政廃止をお伝えしなくては!シンドリア国王との約束の件も...」
きゃっと顔を林檎のように真っ赤にする紅玉ちゃんはやはりシンドバッドさんのこと好きなのかな?
「夏黄文殿...下で、民衆が何やら集まっているようですが。」
「知ってるわよぉ王宮の前でしょぉ?」
「いいえ、それが...別の一団が...王宮へ真っ直ぐ向かっているようですが.....」
「!」
あれは...霧の団...!しかも黒ルフが見える...!私にはもう出来ることはない。後はアラジン、アリババ、モルジアナ達がやるしかない...。
みんな、ごめんね。私はもっと3人と旅したかったけど、駄目みたい。
でも、応援してるよ、、、
頑張って...!!
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バルバッドから煌帝国は遠いけどその間に国を挟むことはなく、ただただ海が広がっているだけだった。
つまりは居住区が見えてきたらそれはもう煌帝国ということで。私は目と鼻の先にある煌帝国に胃がキリキリと痛むのを感じた。
「紅玉姫様のご帰還だ!」
「.....!?あれは殿では!?」
帝都に着くと紅玉ちゃんはお姫様な為、皆が集まってきた。
...そして私にも。
「殿!」
「殿!ご無事で!」
「ここ一年以上...一体何処へ!?」
黙って出て行ったので質問攻めされるのは当たり前で。しかも質問してきた宦官達は私の仕事仲間で、いつも助けてくれる面々ばかり。
「あっ、えーと、あの...」
「ああ!でも今総督は遠征中で...」