第2章 懐かしい香り
結局その条約が無くなったところで、借金の負債が消える訳では無いんだよ。それを分かっているでしょ、アリババ?
「とにかく、明日の貴女の結婚相手がいないことは事実でしょう。すべての条約を廃棄する件、ひとまず皇帝陛下の元へ持ち帰って頂けますか?」
いや、そんなことする筈ないでしょ~
「くだらない.....
...って、持ち帰ったところで、お父様ははねのけるに決まっていてよ?」
紅玉ちゃん...!????持ち帰る必要はないからね~?確かにやりたくない政略結婚がなくなりそうなのは嬉しいってのも分かるけど、ここを手に入れることは結構大きいんだよ~。紅玉ちゃん、考え直して...。
「 あなたの目的であった婚姻 は果たせません!お帰りください!」
「 煌帝国の目的 はねぇ、この地を無傷で手に入れることでしたのよ。でも、果たせないなら父は軍事行動に出るかも知れませんね。」
「それも見逃せとお伝えください!!」
「あなた、なんて図々しいのっ!!?」
そうだ!そうだ!図々しいにも程があるぞアリババ!
あ~~~野次を飛ばしたい...!けど我慢しなきゃ!
「もちろんただでとは言いません!無傷で手に入れた時に勝るとも劣らぬ利益を!我が国との海洋貿易にて、そちらにお返し致します!」
「.......」
「バルバッドは、東南随一の海洋貿易の要...そこを戦火で不毛の更地にすることと、温情を与えて利潤を得ること...それこそ先程の従者殿が言ったように借金返済にも繋がると思います。...どちらを選ばれますか.....軍事力だけではない政治手腕で貴帝国を栄えさせた賢明なる皇帝陛下ならば、一体どちらを選ばれますか?姫君!」
「.....」
アリババの言ってることは確かに合っている...。だがしかし、腑に落ちない。ここで紅玉ちゃんには折れて欲しくないな。
「.......通らないわ、そんな理屈!」
よし!流石紅玉ちゃん!だがこちらにはもう手札がない。あっちの理屈が通らない、それだけで負かすことは不可能。さて、どうするべきか...。
「陛下は、軍事行動をとらないと思いますよ。」
「?」
「なぜなら、バルバッド共和国は「七海連合」に入るからです。侵略しない、させないが我ら七海連合の理念。」