第2章 懐かしい香り
「そう。で、お話とは、何かしら?」
「貴女を、煌帝国の代表と見込んで頼みたい。明日、結ばれるはずの、バルバッド国民人権移譲条約...........
...........
破棄して頂きたい。」
「!?」
「あれは、前王のアブマドが決めたことで、彼は王位から退きました。他の者は皆、国民の人権移譲条約など、望んでいません。」
紅玉ちゃんは周りの様子からそれを読み取り「.......そのようね。」と悔しそうに言った。勿論顔には出ていない。
「だけど、条約は破棄できないわ!これはバルバッド国王と煌帝国の、国同士の取り決めだから、どなたが「次の国王」になろうとも関係ありません。」
思うんだけど、皆さ、こういう時の顔とか凄いよね。アリババも紅玉ちゃんも。紅玉ちゃん、いつもは凄く笑顔が可愛い子なのに、こうやって対立してる時はまるで別人だ。友達の私ですら怖く思ってしまう。私ってまだまだ至らないところが多いと実感してしまう。
「その方と、私は明日結婚する。」
「それは...できません。」
「共に調印式を行う。」
「それも、できません。」
「あなた、何を言っているの!?」
「なぜなら、「次の国王」には、誰もならないからです。」
「.......!?どういうこと.......!?」
「俺たち、バルバッド王国は.......
今日で「王政」に、終止符を打ちます!」
「!!?」
王政に終止符を...?アリババ、こんな事を考えていたの!?ありえない!けどそれなら確かにどうにかなりそうな感じはする!でも、それじゃ、煌帝国はどうなるのよ...。
「国民が欲しいのは王ではなく、幸せな暮らしなんだ。王がいなくとも、民は立派に暮らすことができる。そういう国々を、俺は砂漠を旅しながら見てきた。そこでは人々が協力し合い、代表(決め、自分たちで決めた政治を行い、それぞれが自治する都市国家群を形成していた。平和だった.......
俺は、バルバッドもそうなるべきだと思う。」
...私もその国、見たことある...。あそこは凄かった。皆で考えて、考え抜いた案を出して、法を作っていたから不満を持つ人は圧倒的に少なかった。皆が皆、幸せそうだった.....。