第2章 懐かしい香り
王宮に着くと「余が王ぞっ!!バルバッド国、23代国王、アブ、アブ、アブマド・サルージャ!!余が...余が...」という声が聞こえた。.....やばいやつおる.....。着いて早々帰りたくなってきた...。でも、
「一体、なんの騒ぎなの?」
と普段とは大違いのギラギラした感じで紅玉ちゃんが歩を進めるので、そっと空気を読むことにした。
次いでにバチッとアリババと目が合って、「あ、アイツは...アラジンといたやつ...。」とモロに顔に書いてあったのだがめんどくさいので無視した。
あと、なんか凄い量のルフを肌で感じとったけど、ここではないちょっと遠い所のできごとっぽい。もうやだ、色んなこと起きすぎ...。頭が忙しいわ...。
「騒ぎを聞き付けて参りました。私は、煌帝国第八皇女 練 紅玉。アブマド王の婚約者です。」
紅玉ちゃんの言うことにちょっとだけザワつく宮中。「やっぱり兄さんの婚約者...!」という声も聞こえた。
「失礼、私まだ国王様のお顔を存じ上げないの。一体、どなたが国王様なのかしら?」
「よ、余である!!」
「oh......」
その問いかけに答えたのは...失礼だけど、ブタみたいなやつ...。
あっブタに失礼ってことね。ついちょっと声が出たけど極力抑えたから誰にも聞かれてないでしょ。うんうん。
あと紅玉ちゃんも凄いショックを受けた顔してた。というかもう悲しさ故に「そう」という返事すらも凄い間があった。
「それがですねぇ、姫君...どなたが国王様なのか...わからないんですよ...」
「!?」
「たった今、第三王子殿と副王様がクーデターを起こされまして、どうやらアブマド様は退位なされるようで...次の国王様は、まだ決まっていないのです。ハイ.....。」
「ぎっ...銀行屋.......きっさまぁぁ!」
アブマドが言う言葉を無視して銀行屋はこちらに歩いてきた。
「おや、珍しい方がいらっしゃいますね。殿、お久しぶりです。」
「...うん。そうだね、久しぶり。.....君は、随分楽しそうだね。」
私がそう言うと、銀行屋は「はて」と首を傾げた。腹立つ。