第1章 始まり
「諸君、結論から言おう。
本日の会談にて、交渉は決裂した。」
「!!」
「要求は完全にはねのけられた。国王軍と我々の対立も決定的になってしまった。」
「.........」
「そ...そうか.....俺たちはもうお終いだ.........」
絶望した顔でそう呟く霧の団のメンバー。
これからどうなるんだろう...
「何が、お終いなんだ?そもそも、君たちの戦いの終わりはなんだ?」
「.........?」
何を言い出すんだこの人は?
「貧しさを抜け出すこと。
守るべき家族を養うこと。
そんな崇高な目的を持たん奴もいるかも知れんが、各々の目的のために、盗賊まがいのやり方しかなかった君たちが、今日初めて、国王に正面から話を持ち掛けた。
お前たちは、自分を虐げるものと...今日、やっと初めて!
正々堂々と戦ったんだろう!!?
自分が剣を取った理由を思い出せ!忘れるな!
それでも、今日こんなもので終わりだと思う奴が、この場に一人でもいるのか!?」
(!)
先程まで絶望していた皆の顔つきが、これからも戦えるという顔つきに変化していた。
「何が来ようが、俺が倒してやる。
国から追われようものなら、俺の国で国民として受け入れてやる!」
凄い...!国王としても、人として...も...
「シン...!これ以上、難民を受け入れては、シンドリアの財政は厳しいですよ...!」
ヒソヒソとシンドバッドさんに話しかけるジャーファルさんの声がチラリと聞こえてしまった。シンドバッドさんは「ハハハそんなもん、俺がなんとかするさ!」と言っているが大丈夫なのか...?
「世界はまだ、理不尽さで溢れている。それと戦う者たちを、受け入れる。そのために、俺は国を作ったのだからな。」
シンドバッドがそう言うとピィピィとルフが嬉しそうに羽ばたいた。
「すごいね。」
「ああ、あれが一国の王サマってやつなんだな...」
「ね。あんなに人としての魅力が凄い人、中々いないよ。」
「アラジン、お前すごい人と友だちになったな!」
シンドバッドさんの皆の心に投げ掛ける言葉のお陰か、先程まで元気のなかったアリババは本調子を取り戻したようだった。