第1章 始まり
やっっべ。あのバカが来てたのか...。なんで王宮に...?まさか神官の仕事で?そしたらもうこの国は本当に引き返せない.....。
それに私も大丈夫か?ルフでバレたりしてないよな?
まだ私はあの人の元に戻るべきではない。
人として慕うあの人に会いたいのは山々だが、時期じゃない。
あのバカにバレて、あの人に伝わったら本国強制送還だ。それだけはなんとしても避けたい。
でも同じ国にいたら気づかない訳がない。
でも、私はアラジン達に出会ったんだから、力になりたい。
でも、でも、でも、でも...!!
「さん?」
揺すられてハッとした。モルジアナが凄く不安そうな顔でこちらを覗いていた。
「大丈夫ですか?」
「あ...」
「そんな訳、ないですよね...。」
「あの、」
「アリババ君が帰ってきたし、1回アジトに戻ろう。」
「さんもそこで休みましょう」
「...うん。」
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アジトに着いた。ここに来るまでの記憶が全く持ってない。
「さん、アリババさんの事は私達に任せて、さんは休んでいて下さい。先程から顔色が優れない様ですし。」
「うん、モルジアナ、ありがとう。お言葉に甘えて休ませてもらうね。」
気を遣ってくれたモルジアナに感謝して私はアラジン達と別れた。
交渉は決裂したようだった。力なく俯くアリババを見て大体状況は察した。
まさかここまでウチの国の手が及んでいるとは...。
もうなんなら本国に戻ってあの人にバルバッドに手を出さないで欲しいと懇願した方が良いのだろうか。
いや、でも、それじゃあダメだよね。バルバッド国民が自分達の手で国を変えて、自分達の手でこれからを築いていかなきゃいけない。
じゃないと国は成立できるけど、国として成り立たない気がする。
今日の交渉は頼みの綱だった。それがダメになったのならもう打つ手はないのでは?
ネガティブな考えを払拭する様に肩を叩かれた。
「...え?」
「シンが今日の結果を伝えるそうなので、来てください。」