第1章 始まり
「どうだいカシム君?これで話がまとまれば、スラムの人々の生活は保障されるだろう。それが君たちの望んでいたことだろう?」
「...............」
カシムは黙ったままシンドバッドを睨みつけた。返事をする気はないようだ。
「行っておいでよアリババくん。何も怖いことなんかないよ。君は勇気ある人じゃないか。
僕は知っている!」
アラジンの真っ直ぐな眼差しにアリババは気圧されつつも、王宮に行くことを決意したような面持ちになった。
「うん、良い顔だね。部外者である私が口を突っ込むのはいけないと思うんだけど、でも今の君にならこの国を変えられる、そんな気がするよ!」
賛同するようにモルジアナが頷いた。うんうん、大丈夫。
...大丈夫な筈なのに、なにかとても嫌な予感がする.....。何処か黒くてドロドロしたような それ 。私の杞憂に終われば良いんだけど...。
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その日の内に霧の団のリーダー格であるアリババが王子であり、王宮に向かったことがニュースとなってバルバッドを騒然とさせた。
バルバッド国民はアリババに国のこれからを託すべく、王宮に集まった。勿論、私達も。
「ん~やっぱり王宮の様子は窺えないよね...。」
「そうだね。」
「アリババくん、大丈夫かなぁ?」
「こんなに国民の人たちに支持されているようですから、きっと大丈夫です...」
「そうだよ。それに、アラジン。君が彼の背中を押したんだよ?その君がそんなんじゃアリババもかわい...そ.....!!!」
ぞわっ
それは背中を駆け巡る寒気。
「?さん?」
「...っ」
いけない!!ここにいてはいけない!!!!
「ごめん、ちょっと.....っ人酔いしちゃったからっ、少し、離れたところで、休ん、でるね...っ」
脳内で警鐘が鳴り響く。やばい。嫌な予感はこれだったのか。
はやくいかなきゃ...はやく!!!!!!
グラグラする頭で民衆の群れから離れる時、
「あ~~~っ、.....この人.......絨毯持って.......よか.......」
微かだが、聞き慣れた声が聞こえると共に、大量の黒ルフが私の周りを囲んだ。