第1章 始まり
...まぁでも、ジャーファルさんが怒るのも頷ける。カシムはシンドバッドさんに対してああ言っていたが、もしそれがあの人だったら私は確実にブチ切れていただろう。
シンドバッドさんの様に自分を犠牲にしていた訳ではないが、あの人も王族として、王子として国の為に、国民の為に色んな事をやってきた。私はあの人が割と若い時からずっと仕えているが、最初の方は自分の手を汚すことに躊躇いだってあった。
幾ら国の為とは言えど、汚いことをやるのはまた別の話だった。今となっては普通にこなしている物の、私はあの人を見ていると何処かでまだその頃の気持ちが残っているんじゃないかと思ってしまったこともあった。
それでも、国のために大義のためと心を押し殺して立ち向かうあの人はどれだけかっこよかっただろうか。
そんな彼を馬鹿にされたら私は怒るに決まってる。カシムだって下の人間を下としか見ず、見下している王族貴族にしか出会ってないからそう思うだけだから仕方ない事だとは分かるが、私の主君の様な王族だっていることをわかって欲しいものである。
「では、早速行動しようかアリババ君。」
「行動?」
「君は僕と今から、バルバッド王宮に行くのさ。」
「!?」
「何が仲間だ、結局アリババを王宮に突き出す気か!!」
「違うよ、話をしに行くだけだ。アリババ君、君は言っていたね。「民衆の支持を得たら身分を明かしアブマドと話をつける」と。
それが今ということだよ。」
「???」
あれ、それさっき私達が4人で話してた時にアリババが言ったことだよね。なんで知ってるんだろう?こわ...
「君はすでに民衆の支持は得ているし、君の身分は他国の王たる俺が保証しよう。民衆にも宣言すればいい。その上で君は、「霧の団」頭領 兼 バルバッド国第3王子としてアブマドと話をつけるのだ。」
「.........でも...」
「怖いのかい?自分が王子と認められないことが。」
「.............」
「大丈夫、君は王子だよ。君の父上から聞いている。俺は古い知り合いでね。」
「えっ!?」
「うん...君はバルバッド先王によく似ている。君は紛れもなくバルバッドの王子だ。
だから君には、重い責任があるんじゃないか?」