第1章 始まり
「さあ、終わりだ。国軍につき出すぞ。」
「そうですね。アブマド王は「霧の団」をどうするのでしょうね?」
「.....!!」
「むろん、全員処刑するだろう。
反逆者の末路 は死罪!
こいつだってそれぐらい覚悟で戦ってきたんだろう。」
シンドバッドさんの顔は至って真面目で冗談を言っている様には見えなかった。
「...!」
「冗談じゃねぇ...
俺はおいしい思いできるっつうから入っただけだぜ...」
「.....」
「あっ、待てよ!」
「俺も!」「俺も!」「俺も!」
1人、また1人と霧の団だった人達は逃げ帰った。
屋上に残されたのは先程の5分の1もいないだろうか。
「...惨い.....。」
ただその一言につきる。
「...残ったのは、これだけか。」
「.....
俺の...「霧の団」が...」
「.....「霧の団」は、君が作ったのか。」
「.........」
まさか、シンドバッドさんもジャーファルさんも霧の団が寄せ集めと気づいてわざとさっきの話をしたのかな...。
カシムと話すその様子からは何も伺えないが、それが測ったものだとしたら流石シンドバッドとしか言いえない。
「義憤のため、国軍と戦うなど...死ぬつもりだったのか?
無謀な上に愚かだぞ。」
「無謀なんかじゃないね!
俺達は国軍に負けなしだった。」
冷たく言い捨てるシンドバッドさんを前にカシムはギリィと歯ぎしりをする。
「それは、国軍から情報をもらってうまことやっていただけだろうが。」
「!!」
更に追い討ちをかける。もうカシムは反論する術も無かった。
「己の無力さもわからないなら、お前はなおさら愚か者だ!!
「霧の団」は弱い!俺一人に壊滅させられるほどに弱い!!
お前は、勝てないケンカにまわりをまきこんで、破滅させようとしてただけだ!!」
「!!」
グウの音もないとは正にこのこと。シンドバッドさんの正論にカシムはショックを受けていた。くそっ!!と地面を殴る彼を見ていると最早同情の念すら湧いてきた。