第1章 始まり
あの後、アリババの作った炎の壁によって行く手は阻まれ、霧の団を逃がしてしまった。
シンドバッドさんとジャーファルさんによるとアラジンの友達であるアリババは、霧の団のメンバーで、奪ったものを市民に分け与えるヒーロー的なの存在だそう。
まぁこの国はもうあと1回押されたら倒れる位不安定な状況にあるからそれも頷ける。
王が無能だと大変だねぇ.....。
「.....」
チラリとアラジンを見ると凄く落ち込んだ様子だった。
可哀想...。
何か果物でも買ってこようかな。
「アラジン。ちょっと出かけてくるね。すぐ戻るから。」
アラジンは力なくこくりと頷いた。まだ話が解るだけ良いのだろうか...。
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「アラジン~!君の好きなスイカや美味しそうな果物買ってきたよ!」
部屋に入るとアラジンは月を見たまま固まっていた。
「アラジン...?」
声をかけても何も反応しない。挙句の果てには項垂れてしまった。
どうしよう...。私には元気付けることは無理なのだろうか...。
悩みに悩んで今はそっとしておこうとアラジンを見つめた時、アラジンの正面にある窓に何か黒い影が見えた。
(ん???)
それは徐々に大きくなっている。
と、いうかこちらに向かってきていた。
「アアアアアアア!」
ガラガラガシャンと後ろにある壁に何が激突した。
咄嗟に見ればそこにはひっくり返ったアリババ、そしてモルジアナ。
あっ。
なんとなく状況は分かった。
アラジンと目が合ってへらっと笑っている彼を見て、心の中でため息をついた。
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「...ねぇ、もし王様がそれでも君の言葉を聞いてくれなかったら...
どうするんだい?」
親友で霧の団のリーダーであるカシムのこと、自分が王子だったこと、を話したアリババは指示を得たら身分を明かして王様に直談判すると言った。
確かにこの国を救うにはそれが一番だけど、アラジンの核心を突く言葉にアリババは口ごもった。
「アリババくんが...
大切な友達のためを想う気持ちは、とてもよくわかるんだ。」
でも、怒りに任せて戦ってしまうと、悲しいことが起こる気がするんだ...