第10章 心配
「夏美さんっ。
もう大丈夫なんすか!?頭痛い?」
「大丈夫よ、ありがとう」
「夏美さん倒れた時、俺心臓止まるかと思いましたよー。
もう倒れちゃダメです」
ギュッと抱きしめられる。
というより、抱き抱えられるの方が正しいかな。
顔を胸板に押しつけられて、ちょっと苦しい。
「……学習しないね。
また赤葦さんに怒られたいの」
「赤葦さんが怖くて口説けねーって。
ツッキーこそビビってんの?」
「はぁ?なんで僕が……」
「喧嘩は良くねーべよ」
「ちっこいのには関係ないんだけど」
「ぬぅわんだと!」
「こらこら、仲良くね?」
「まぁ、夏美さんが言うなら……」
「あ、そろそろ練習始まるから戻ろっか」
それぞれのチームに戻り、切り替える。
「赤葦」
「はい」
「頑張ってね」
「っ、はい」
ポンと軽く背中を叩くと、フワリと笑った。
その顔、反則でしょ。
さっきと同じ失敗をしないように気持ちを切り替え、サポートに回った。
バレー部に限ったことじゃないけど、運動部のマネージャーはよく動く。
得点係、審判、記録、補充、手当て。
言い出したらキリがない。
正直キツイし、遊ぶ時間もないし、何度も辞めようと思った。
でもチームが勝った時の喜びは、それまでの負の感情を一瞬にして吹き飛ばしてしまった。
このチームが勝つ為なら頑張れる。
このチームを勝たせたい、勝ちたい。
私はコートに立てないどころか、入ることすら出来ない。
公式戦のマネージャー枠は1人と限られていて、そこに座れるマネージャーは私じゃないから。
「……頑張れ、皆」
だからこそ、勝ちたい。
高校生活最後の年、今のメンバーで過ごせる最後のインターハイ。
絶対に勝って、少しでも多く皆とバレーして、それで……笑って卒業したい。