第10章 心配
「そんなに謝らなくても……」
光太郎が悪い訳じゃないのに。
「そういう人ですよ、木兎さんは」
「そうね」
「あかーし!トス上げてくれー」
「今行きます。
じゃあ、くれぐれも無理はしないでくださいね。
あと、男には気をつけてください」
「ありがとう」
今は休憩時間らしかった。
「大丈夫か?頭」
「は?」
え、頭?
「クロ、今のじゃバカにしてるみたいに聞こえる。
サイテー」
「うわ、まじか!
スマン!バカにしてねぇ!
頭打ってたから大丈夫かって……」
ワタワタと慌てる黒尾くん。
珍しい。
「なんだ、そういうこと!
大丈夫よ、心配してくれてありがとう」
「おっ、れじゃねーし。
研磨が心配してて俺はその付き添いっつーか……」
ガリガリと頭を掻く。
「そうなの?」
それはもっと珍しい。
「違う。クロが行こうって言った。
俺に押しつけないでよ」
ゲシ、と黒尾くんを蹴る。
「黒尾くん照れてるの?
意外と可愛いとこあるんだねー」
「ばっ、うるせー」
そこにはいつもの余裕そうな表情の黒尾くんは居なかった。
「と、とりあえず無理すんなよ。
なんかあったら俺に言え」
くしゃり、と髪を撫でられた。