第9章 きす。
「あ……」
徐々に小さくなっていく赤葦自身。
名残惜しくて、もう一度撫でた。
「戻りますか」
「……うん」
「その欲求不満顔、直さないとまた迫られますよ」
「っ、気をつける」
部屋までの廊下は互いに一言も喋らず、無言が続く。
「じゃあおやすみなさい、夏美さん」
部屋の前で軽く髪を撫でてくれる。
「おやすみ」
消灯時間間際になってナナちゃんが戻って来た。
足取りがフラフラしてて転びそう。
明日大丈夫かな?
光太郎に注意しとかないと。
と考えていると携帯にメッセージが入った。
「はい?」
差出人は光太郎で内容が……。
『スゲー気持ち良かったな!!
ナナエロかったし、思い出したらまたちんこ勃ちそう。
明日も同じ場所で!!』
まさかの誤送信。
「ちょっと用事思い出しちゃって、すぐ戻るね。
電気消してて大丈夫だから」
光太郎達の部屋に向かう。
まだ電気が点いていて騒がしかった。
「光太郎」
「お、夏美じゃん。どした?」
「何も言わずにメッセージ開いてみ?」
ニッコリと貼りつけた笑みを浮かべる。
「……あッ!?」
「誤送信だよね?
ナナちゃんに送ってたとしても、セクハラでしかないんだけど」
「うわー、ワリ!!」
パチンと顔の前で合わされた掌。
「木兎さん、もう消灯なんで電気消しますよ。
夏美さん?どうしたんです?」
眠そうな顔の赤葦が出て来た。