第8章 俺、嫉妬深いって言いましたよね
自主練が終わり、それぞれ体育館の片付けに移る。
得点板を倉庫に片付けていると、後ろで人の気配がした。
「今は泣かないんですか?」
「倉庫に入ったら泣くみたいな解釈しないの!」
烏野の月島くん。
「……付き合ってるんですか?赤葦さんと」
「あ、うん」
まだ少し照れる。
「へぇ、赤葦さんってもっと可愛らしい人が好みなんだと思ってました」
その言葉にツキリと胸が痛む。
多分皆が思うことだろう。
なんで、あなたなのって。
「……そうね」
前の彼女は、ナナちゃんは、誰が見ても可愛い顔立ちだった。
もちろん声や仕草も。
「今日のメンバーでしたら……そうですね、ナナさん、でしたっけ?
木兎さんの彼女の。
あの人が1番お似合いなんじゃないですか?」
「やめて」
声が震える。
自分が可愛らしくないことなんて、分かってる。
「赤葦が選んでくれたんだから、それで良いじゃない……!」
目に涙が溜まる。
でも絶対泣かない。
泣かされたくない。
「ほら、すぐに泣く。
どうして女子ってすぐに泣くんですか?
泣けば許されるって、そう思ってます?」
グッと近づいた距離。
覗かれる顔。
「月島くんが、傷つけるようなこと言うからでしょ……」
この空間が辛い。
ここに居たくない。
「僕の言葉に傷つくんですか?
彼氏でもない、ただの後輩に。
じゃあこの涙は僕が理由?」
顎を持ち上げられ、更に距離が近くなる。
目に溜まった涙を覗かれるようで。
「つきしま……」
「あらら〜?
こんなところでナニしてんのかなァ?お2人さん」
「黒尾くん」
ホッと息を吐く。
ようやくこの空気から抜け出せる。