第7章 ヘイヘイヘーイ
「俺の彼女なんで、気安く触らないでくださいね」
「赤葦!」
「ひゅー、お熱いねぇ」
「隠してた方が危ないんで。この人無自覚だし」
「あー、確かにな。
自分がモテるっつー自覚ゼロだしな」
ワシャワシャと髪を撫でられる。
「実際モテないし。
モテるっていうのはナナちゃんみたいな女の子のことを言うのよ」
「ほら、そういうとこです」
髪を撫でる黒尾くんの手を赤葦が払う。
「へーへー、赤葦って嫉妬深いのな」
「そうですよ、だから灰羽にも言っておいてくださいね」
「やだね、なんで俺が……お前が言え」
「まぁ、そのつもりです」
灰羽?
灰羽って誰だっけ?
聞き覚えのない名前に首を捻る。
「ねぇ、灰羽って、ぐぇ……」
誰、そう聞こうと思っていた言葉は途切れる。
息が詰まるし、目の前真っ黒だし、何!?
私の身に何が起こったの?
「相変わらず可愛いっすね」
ギュムギュムと更に力強くなる拘束。
「リエーフ!」
「あだっ……」
何か越しに伝わる衝撃。
もう、一体なんなのよ……。
誰か説明して。
「おーい、夜久。
リエーフ蹴んなら夏美を離してからにしてやれ。
それはあんまりだ」
誰か越しに蹴られたのか、私……。
通りであの衝撃。
とんだ災難。
「うわ、まじ?ごめん!気づかなくて!」
「だ、大丈夫だから、なんとかして……」
なんとか抜け出そうともがくけど、もがけばもがく程強く抱きしめられる。
「赤葦ぃ……」
「灰羽、うちのマネージャーだから。
離してくれる?」
「えー」
「離してくれる?」
「……ハイ」
赤葦の圧力に負けたのか、ゆっくりと解放される。