第1章 カワイイ彼女
「そうだったの……。
ごめんね、ナナちゃんの気持ちを分かってあげられなくて。
距離感気をつけるね」
この際、性格が悪いって言われても良い。
今まで何を悩んでたのか。
奪っちゃえば良いじゃない。
なんて簡単なこと。
そんなことにも気がつけないなんて。
この子も、赤葦も傷つけず、私が報われる方法で。
赤葦を落として、この子にも別の好きな人が出来るようにすれば、心配することなんて何もないじゃない。
「……今日、今から暇?
もし暇ならバレー部見学に来ない?」
「え?
怒ってないんですか?」
普通にしていても大きい目が、更に大きく開かれる。
零れ落ちそう。
「え、なんで怒るの?
好きな人の近くに異性が居たら嫉妬するのが普通でしょ?」
まずはこの子から、取り入ろう。
「で、どうする?来る?辞めとく?」
「行きます……!」
分かりやすく、表情が明るくなった。
「ふふ、分かった。
じゃあちょっとだけ待っててくれる?」
「はい!」
体育倉庫から必要なものを持ち出す。
思っていたより少なくて、両手で収まる。
「お待たせ、行こっか」
「半分持ちますよ」
「いーのいーの!
ナナちゃん細いから腕折れちゃいそうだもの」
「むぅ、そんなことないです!
こう見えても力はあるんですから!」
頬が膨らむ。
可愛い。
小動物みたい。
体育館に戻ると、まだ休憩中だった。
「おー、瀬名、ご苦労さん」
「いえ、ここに置いておきますね」
「おう」