第12章 ゲーム
「あの……別に気にしなくて良いから」
「ごめんね、じゃあ一瞬だけ……」
改めて差し出された首筋に歯を立てた。
ちょっと強く噛み過ぎたのか歯型が残ってしまっている。
「ご、ごめん、強く噛み過ぎた」
「別に……そんなヤワじゃないし」
「研磨くん顔あかーい」
「クロ煩い」
「ほ、ほら!次!」
生ぬるい空気に耐えられなくて、続きを促す。
次は孤爪くんの番だ。
ルーレットには、前の人を褒めると出ている。
前の人は正面の人と言うことになり、孤爪くんの正面は光太郎だ。
「……スパイクは凄いと思う」
ポツリと小さく漏れた声に光太郎のテンションが上がる。
じゃあ次は、と黒尾くんに視線が集まった時、部屋のドアが開いた。
「なんですか、皆して」
「京治、委員会お疲れ様」
「はい。それでこれはどんな状況ですか?」
「皆でゲームしてんの!カップルゲーム!」
「カップルゲームって……明らかカップルじゃない人も混ざってるんですが」
「ほら、赤葦も座れって!夏美の隣!」
光太郎に促されて私とナナちゃんの間に座る。
「孤爪、意外とヤンチャなんだね。ハンカチ使う?」
「要らない」
首筋に付いた歯型を見て京治がハンカチを差し出す。
その様子に黒尾くんと光太郎がまたニヤニヤし始める。
「なんすか、2人共。気持ち悪いですよ」
「その歯型なぁ、オタクの彼女が付けたんだぜ」
「は?」
「睨むなって、俺先輩だぞ?赤葦クン」
楽しそうにお腹を抱えて笑う。
「どういうことか説明して貰って良いすか、夏美さん?」
「あの、そういう司令だったから……」
「孤爪を噛むって?」
「うん……首を噛むって出たの」
「あとで覚えておいてくださいね」
耳元で囁く。
でも部屋の中では丸聞こえだ。
「ほーら、次黒尾の番だろ!早く!」
「うぃー。
ボクトを後ろからハグ……っんで俺だけ罰ゲームなんだよ!?
他の奴らだけご褒美狡いだろ!」
「黒尾ドンマイ!さぁ来い」
「へーい……」
嫌そうな顔の黒尾くんを小声で孤爪くんが煽っていた。
さっきの仕返しかな。