第1章 カワイイ彼女
「うん、羨ましい。
いつも真っ直ぐ前だけ見てる」
「……そうでもないぞ?」
「え?いやいや、あるのよ。
私と違って問題に正面からぶつかっていけるし」
「……確かに俺嘘はつけねーし、曲がったことは嫌いだ。
でも1つだけ、ちゃんと向き合ってねぇことがある」
「そうなの?」
それは意外だ。
驚きに目を丸くする。
「夏美」
試合中を彷彿とさせるような強く真っ直ぐな目。
その目から目が離せなかった。
いや、離してはいけない気がした。
「俺、お前が好きだ」
「……はい?」
今、木兎はなんて言ったの?
スキ?
誰が誰を?
「またまた!
いつから冗談でそんなこと言うようになったの!」
「夏美。
俺今、真剣なんだけど」
「っ、ごめん」
普段の声よりも数倍低い声。
これは本気で怒っている。
「ずっと夏美のことが好きだった。
でも俺に告白するなんて勇気なくて、遠くから見てるなんて嫌だから少しでも近づきたくてバレー部のマネに誘った。
今日も、勉強教えて貰うっつー目的の裏でエッチなことも考えてた」
木兎の目が、声が、言葉が、私の身体を火照らせていく。
「本気で好きになって、本気で落としたいと思った。
でも中々勇気出なくて……。
夏美が、赤葦のこと見てるの、知ってたから」
「え……」
「好きだから、ぶっちゃけ身体だけでもって思って今日家に呼んだ。
エッチする気だった。
でもよ……帰り際のあんな顔見せられたら、襲えねぇよ」
普段は寄らない木兎の眉間に、シワが寄っている。
木兎をこんな顔にさせているのは、私。
こんな私を思ってくれている人が居る……。