【文スト】ボタンを押したら飛んじゃった【wrwrd】
第6章 1.05 対面
グルッペンはそう言うと少しだけ頭を下げた。
「大変恐縮です。なに、我々は当たり前の事をしただけですよ。…私は武装探偵社の太宰治。此方は、同僚の中川敦です。」
太宰はそう言うと、ニコリと笑う。
敦も太宰の紹介にお辞儀をした。
「それで、早速本題に入りたいが、先ずは其方のお話をお聞きしても宜しいか?」
グルッペンがそう言うと太宰は静かに頷く。
「…あなた方が、変なボタンを押してしまって気づいたら此処に居た。という事と、何処かの国の軍だ。という事はお聞きしました。…これは本当ですか?」
太宰は真っ直ぐにグルッペンに視線を向け話をした。
この言葉に、グルッペンの後ろに立つトントンは“お前ペラペラと…”という顔をしてコネシマを見る。
「あぁ、その通りです。そこに座るゾムという男が城壁で不審なボタンを見つけ、押した。そして気付いたら此処に居た。我々は元々“我々国”という国の軍部でした。…失礼ですが、我々国はご存知で?」
グルッペンは躊躇い無く質問に答えると、太宰に尋ねた。
「申し訳ありませんが、そのような国は聞いた事ありません。寧ろ、存在しないと思っています。」
太宰は堂々と答える。
その言葉に、会議机の周りの何名かがピクリと反応するのを太宰は見た。
「…ふむ。やはりそうですか。…失礼ながら、此方の国のネットワークにある極秘情報まで閲覧させて頂きましたが、我々の情報は何も無かった。…つまり、我々は此処では存在していないという事でしょう。」
グルッペンはしれっととんでもない事を口にする。
「国の最深部の情報まで潜り込むとは、なかなかやりますね。」
ニコニコと太宰は言うとグルッペンを探るように見た。
「まあ、うちの情報班は優秀ですから。」
組んだ手の上に顎を乗せながら、グルッペンは答えた。
「…俄には信じられませんが、皆さんは所謂異世界から来た…と?」
敦がつい口を挟む。
「此方も信じられませんが、そうとしか考えられませんね。…異能力、とか言う物は我々の国ではありませんでしたし。」
グルッペンがそう言うと敦は“うーん”と唸った。