第2章 そろそろ限界
――秋。文化祭が近くなり、何かと駆り出されることが多く忙しくなってきたある日。
私はクラスのとある男子に放課後屋上へと呼び出された。
この忙しい時に……そう思いながらも私が屋上へ行くと、案の定、告白をされた。
勿論丁重にお断りした。だって私には運命の人がいる。
「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるから」
「それって、みっちゃん先生?」
「は?」
思わず間の抜けた声が出てしまっていた。なぜここで長船先生の名前が出てくるのか。
「委員長、みっちゃん先生と仲が良いから」
「や、別に仲良くないし。ただ委員長だから話す機会が少し多いってだけで」
「なら、それって誰?」
「え?」
訊きながら一歩こちらに足を踏み出した男子にぎくりとする。
「クラスの奴?」
「え、いや、」
一歩一歩こちらに近づいてくる男子に、私は同じ間隔で後退っていく。
え、なに、怖いんだけど。やめてよ。
「嘘だろ。他に好きな奴がいるなんて、ただ俺が嫌なだけなんだろ?」
「嘘じゃない。私にはずっと前から好きな人が――っ」
ガシャンと音がして、背中にフェンスがぶつかった。――まずい。
「だからそれは誰なんだよ!」
「ひっ」
声を荒げ一気に間を詰めてきた男子に私は思わず身を硬くし目を瞑った。そのときだ。
「女の子にそういう乱暴なのは格好良くないなぁ」
そんなあっけらかんとした声が聞こえてきた。