第1章 運命の人
「君は本当に偉いなぁ」
「はい?」
教室へ戻り花を活けた花瓶を先生の机の隅に飾ると、そんなことを言われた。
顔を上げれば、普通の女の子ならどきっとするような綺麗な笑顔がそこにあって。
「委員長の仕事。ほら、僕が押し付けるような形になってしまったからね。でもちゃんとやってくれているから偉いなぁって」
「……」
一応自覚はしているんだ。そう思いながら私は答える。
「花は、好きなので」
「うん、知っているよ」
「は?」
「……ううん、なんでもない」
そう言って、長船先生はすっと椅子から立ち上がった。
「さて、じゃあ僕は一旦職員室に戻るね。また後で」
「あ、はい」
そうして長船先生は教室を出て行ってしまった。
……たまに、長船先生はああして意味のわからない言葉を残していく。
そうすると私はいつもなんだか胸がざわざわして落ち着かなくなる。
だから、私は長船先生が少し苦手だ。