第2章 そろそろ限界
ぱっと目を開けると、長船先生が男子の向こうに笑顔で立っていて。
「み、みっちゃん先生」
男子はすぐさま私から距離を取った。
「男なら格好良く行こうって、いつも僕話しているだろう?」
「っ、」
するとその男子は逃げる様に駆け出し校舎へと戻って行ってしまった。
それを見送って、私はへなへなとその場に座り込む。
――こ、怖かった。
「大丈夫かい? 委員長」
「……っ」
降ってきた声を見上げれば長船先生の綺麗な笑顔があって、ほっとして、不覚にも涙腺が緩みそうになる。
こんな弱いところを見られたくなくて、私はぱっと視線を逸らし俯いた。
「だ、いじょうぶ、です。ちょっと、驚いただけで。だから、先生も行ってください」
でないと、目の前でみっともなく泣いてしまいそうだ。
……なのに。
「こんな君を置いて行かれないよ」
そうしてぽんと頭に手を乗せられて、そのまま優しく撫でられた。
「怖かったね」
「っ、」
やめてよ。そんなことされたら……。
じわじわと涙が溢れ出てきて、視界が一気にぼやける。一度流れ出てしまったそれはもう止まらなくて。
放課後の喧騒に紛れ小さく嗚咽を漏らす私を、先生はずっとその大きな手で撫でていてくれた。