第1章 運命の人
私はどこにでもいるごくごく普通の女子高生。
人より抜きん出ているものは無し。……強いて言うなら頼まれると断れない性質で面倒ごとをよく押し付けられること。
そんな私は今クラスの委員長をしている。本当はそんな柄じゃないのに。
なぜそんなことになったか。今の担任教師が全ての元凶だ。思い出すたびにむかむかと腹が立ってくる。
他の女子からは若くてカッコいいともてはやされている担任だが、私は正直言うと少し苦手だ。
確かに顔はカッコいいと思う。いや、それよりも美形という言葉の方が合うかもしれない。怖いくらいの美形。
皆も言っているが本当に、なぜ教師をしているのか謎だ。あの容姿なら他にいくらでも選べただろうに。例えばモデル。例えば俳優。
しかしなぜかあの人は今現在うちのクラスの担任をしている。
「おはよう、今日も早いね」
まだ他の生徒は誰も来ていないだろう時間に教室に入ると、そう言って窓際の机にいた担任が片方の目を細めた。
「流石は委員長」
「おはようございます、長船先生」
――長船光忠。それがうちの担任教師の名前だ。
愛称はみっちゃん先生。ほぼクラスの皆がそう呼ぶ中、私は頑なに長船先生と呼び続けている。
年齢は確か27歳。丁度私より10歳年上ということになる。
いつも黒のネクタイに黒のベストを着ていて、他の色のネクタイをしているところを私は見たことが無い。
そして長船先生について特筆すべきはその右目を覆う眼帯だ。噂では事故で幼いころに視力を失いそれからまるで戦国武将のようなその眼帯を着用するようになったらしい。しかしそこがまたミステリアスでカッコいいと女子たちは言う。
「うん、やっぱり君を委員長にして正解だったな」
「……」
あなたのせいでそうなってしまったんだ。そう言いたいのを我慢して私は自分の机に鞄を置く。そして必要なものを鞄から取り出し机の中へと仕舞った。