第6章 俺様暴君にご用心!?
「何してんの、冷えるぞ」
「斗真」
モコモコしたカーディガンを肩へとかけてくれながら、斗真がふわりと、肩を抱く。
「さすがに冷えるな、そろそろ」
「……」
「そんなに嫌だった?連れてきたの。喜ぶと思ったんだけどな」
「……嫌とかじゃ、ないの」
むしろ嬉しかったし。
「なんかあたし、ここにいていいのかな、って」
「は?」
「はじめは、契約で始めた生活なんだけど。お金も必要なのはほんとだし。だけどあたし、もらうお金に見合うこと、してるのかなって」
「何それ」
「あたし、ふたりに甘やかされすぎなんじゃないのかな。世間はそんなに、甘くないよね」
弟たちまで、面倒見て貰って。
恋人でもなんでもないのに。
「面倒なこと、考えてんなよ」
「え」
「お前は黙って、ここにいればいんだよ」
「何それ」
斗真も透も間違いないくカッコいいんだから、別にあたしじゃなくてもいいはず。
そろそろこんな夢みたいな生活も、たぶん限界だ。
こんなこと続けていいはず、ないんだ。
「……喉渇いちゃった」
なんとなく。
斗真の隣にいられなくて。
そのまま方向転換、しようとすれば。
履きなれないヒールはカクンと傾きよろけ。
さらには慣れないドレスに足が絡まり、思い切り踏んづけた。
結果。
傾いた身体は運悪く。
船の手すりを乗り越え、ふわりと、宙を舞ったのだ。
「は?……っ、來っ!?」
あり得ない。
だから、慣れないの着たり履いたりしちゃ駄目なんだってば。
船から落ちる直前、そんなどーでもいいことが頭をよぎるあたり、あたしってば余裕だなぁ、なんて。
海の中に体が沈むまでは確か、考えていた。
けっこうな高さから海に投げ出されたあたしは、水面に叩きつけられたような衝撃と。
ドレスが絡まって相当な重さとなり。
水の中で一気に、身動きが取れなくなっていた。
あー、ヤバい、これ。
息、出来ない。
…………-…。