第6章 俺様暴君にご用心!?
もう、その時のざわつきようったら。
まじほんと、ないわ。
ちんちくりんなあたしのヒールはゆうに9センチはあると思う。
それでもふたりの方が頭1個分はおっきいのだ。
艶のある高級スーツを身に纏い。
ブラックとダークグレーで決めたふたりに対し。
真っ白なプリンセスラインのふんわりとした清楚なドレス。
まるでウェディングドレスのようで。
確かにかなりの時間、うっとりと見惚れてました。
だけど!!
「堂々としてろ、心配すんなよ。お前あいつらの嫉妬心煽るくらいの容貌は十分あるから」
「そうそう」
それ、フォローになってないし。
「ねぇ、もしかしてあたし連れてきたのって女避け?」
「冴えてんじゃん」
「………」
たったそれだけために、一体いくら遣うのよ、この人たち!
これ1着でも桁がふたつくらい違うんだけど。
……レベル、違いすぎだわ。
「なんか食えば、とりあえず」
「食欲ない」
こんなに突き刺す視線が痛いのに、食欲なんて出るわけないじゃん。
「風あたってくる」
「あ、おい」
止めようとする斗真を遮って。
出口へと足を進める。
見計らったように女性たちがふたりに駆け寄るのを視線に捉え、なんとなく罪悪感に苛まれながら甲板へと歩みを進めた。
全てが、別世界。
まさしく住む世界も、生きてきた世界も違うんだ。
日常的なこの生活も。
服装も。
全てが彼らにとっては日常で。
あたしには、非日常。
雇われている家政婦さんだってちゃんと立派にプロなのに。
あたしは。
お金貰ってこんな豪華なドレス着せて貰ってこんなパーティー、連れてきて貰って。
なにやってんのかな。
ここにおいてもらえるだけで贅沢な生活させて貰ってんのに。
あたしはふたりに、何を返せてるのかな。
あたしは。
全部中途半端で。
ここにいて、いいのかな。
いつまでここにいて、いいのかな。