第5章 『斗真』と『透』
「何思い出したの、今」
「な、何も考えてない……っ」
「のわりには、さっきから触れただけで体跳ねてるの気付いてる?」
「…………っ」
「ずいぶん、敏感だね?」
おんなじ顔。
悪戯に細められた目は、さっきの斗真と全く同じ顔。
同じ顔、で。
体に同じように刺激を与えられたらそんなの、脳は同じだと勘違いしちゃうに決まってる。
だってさっきは。
「………冷たい、から」
「?」
「透の指、冷たい」
「ああ……、アイスコーヒー飲んでたから」
そう、言って。
だけど気付いたように、壁に凭れたままの斗真へと視線を、うつせば。
ふたりは何故だか意地悪に、笑顔を交わした。
「冷たいの、斗真と一緒?」
「!!」
なんでこのふたりは。
なんにも言わないのに理解しあえちゃうの。
あれだけの情報で。
いったい何を悟ったんだろう。
「…………期待してる?」
「………っ」
なんで。
しかもよりによって同じ顔で、同じ声で。
同じ言葉を、言うのかな。
「じゃぁ、応えてあげる」
こんなの、脳は勘違いしちゃう。
さっきの続きを、期待、しちゃう………っ
ぎゅ、て。
目を閉じればすぐに、透の舌は耳を舐め始め、ダイレクトに音が響く。
冷たい優先は制服の中へと侵入し、下着の上から、先ほどから熟れすぎて痛くなっている突起を、掠めながら撫でていく。
「あ………っ」
下着をずらして、直接その突起をつまみ上げた、瞬間。
思わず漏れた声に透は満足そうに瞳を細めた。
だけど。
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
急に、何かを知らせるアラーム音が鳴り響き。
「残念、時間だ」
「え、え?」
「また、あとでね?」
制服を綺麗に直されて、さらにはそのまま起こされて。
彼は先ほど同様、また眼鏡をかけてパソコンを開いた。
「………ぇ」
そのまま彼は、やっぱり難しい顔してパソコンとにらめっこを始めたのだ。
先ほどまで壁に凭れてこちらを伺っていたはずの斗真の姿もそこにはなくて。
嘘、でしょ。
「………………なんで…?」
こんな状態で。
何もふたりして同じことする必要、なくない?