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愛玩彼女

第5章 『斗真』と『透』



「!?」


だんまりを決め込むあたしをのぞきこみながら。
まきちゃん。

「はぁ?な、なんで……」

時々けっこう核心をついてくれちゃうのは偶然なのか、なんなんだろう。

「だってほら、いきなりお金必要なくなる理由なんてそんなもんじゃん」
「いや、あるじゃん……ふ、風俗とか」
「ふーん、風俗?」
「いや、違いますけど、例えばの話」
「ふーん」

興味なさげに頬杖ついて、視線の先はすでにあたしから窓へと興味の対象を変えている。

まぁ、いんだけどさ。
別に。


だけど。
まきちゃんの興味はあたしからどこか違うところにうつったわけではなくて。

「だってそれ、その眼鏡」
「?」

視線は窓へと向けたまま、軽く流すように響いた言葉。


「10万くらいするよね」


まきちゃんの視線は、窓にうつるあたしへと固定されていただけで。
まだまだ、あたしはちゃんと興味の対象らしかった。

まぁだけど。
そんな余計な思考で頭がいっぱいになるくらいには。
けっこうな衝撃を受けたわけで。






「………えぇ?」


ガタン

思わず立ち上がったあたしに突き刺さる、冷めた視線。

「どうした嵯峨野、質問か?」

……HR、始まっていたことすら気付かないくらいには。
たっぷりとあたしの時間は止まっていたらしかった。




「………すみません」


椅子に座り直して、目の前で肩を震わせてる友人の椅子を思い切り蹴りあげる。

先生来てるなら、そう言って

考え事してたあたしも悪いんだけどさ?


ガンガン、て。
数回蹴ったところで再度ため息を漏らせば。

前の席でまきちゃんが、再度振り向いた。



「あんまうっさいとこのままちゅーするけど?」

「………」


怖い。
目が本気だよ、この人。
絶対敵にまわしちゃいけないやつだ。





はぁ。



なんか。
あたしの回りには癒し、と呼べる輩はいないのかな。
ほんと。







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