第5章 『斗真』と『透』
どっかの金持ちが、余所で作った子供。
斗真は自分たちのことを、そう表現した。
つまりは愛人さんの子供、ということになる。
弟たちがこっちに越してきた日、初めて、すごく簡単だけど手料理を作った。
とはいっても、うちにあったないに等しい食材では作れたのはグラタンと、余った冷凍のご飯でドリアだけだけど。
それでも彼等は、「美味しい」、そう言って食べてくれた。
『手料理なんて、昔小さい時に家政婦さんに作ってもらった以来だ』
なんて。
プロの味と比べられても非常に困る発言を、いただきますの代わりにして。
昔、家政婦さんに。
お母さんに、じゃなかった。
すごくすごく、嬉しそうに食べてくれたのだ。
このマンションは、たぶん月百万単位でかかるやつ。
もしかしたらもっとずっと高いかもしれないし、よくはわからない。
ここの共有施設には、プール、ジム、高層階にはバー、そしてシアタールーム、果てはキッズルームもある。
キッズルームにはカフェが隣接されていて、そこでランチしながら子供を見れるようになってるのだ。
この前みかを遊ばせながら、透がカフェに連れていってくれた。
プールにはもちろん、キッズプールもついていて、小さな子供まで遊べるようになっているし、シアタールームにはきちんとポップコーンまで売っている。
全てが別世界で。
住む世界がまるで違うのだと、つくづく思い知らされる。
「朝からため息?」
「まきちゃん」
「最近綺麗になったしさ、心なしか肌もきれいだよね。リア充バンバン伝わるのにため息、増えたね」
「………そぉ?」
「うん」
「別に充分してる訳じゃ、ないし」
「でも最近、お金の心配、しなくなったよね?」
「…………」
「來?」
相談、したいのはしたいんだけど。
まさかお金で買われました、なんてさすがに友達には言えない。
しかもHRがはじまるこんな爽やかな時間に言える内容だとは到底思えない。
「…………愛人にでもなった?」