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愛玩彼女

第3章 体の異変


掴んでいた手を逆に取られ、そのまま足早な彼にぴっぱられる形で、歩き出してしまったのだ。

それ、は、入ったまま、だし。
もちろんずっと動き続けている。

「や………っ!?嘘待って……っ!!」


この状態でなんて、歩けない……っ


そう、思って透へと再度、視線を向ければ。
彼はわざとらしく目を細めて、だけど、なんにも知らない、ふりをする。


「すみません、珈琲キャンセルで。具合悪くなっちゃったみたいで。ごちそーさまでした」

明るく声を響かせながら、すぐあとについてくる透。

「透……っ」
「んー?」
「これ、お願いこれ止めて」

「なんのこと?」
「………っ」

「透お前やりすぎ。バレるぞ?」
「別にいーよ?斗真のそんな顔、はじめて見た。どーしたの?ああ、もっと上げとく?」

カチカチカチ

「え?………ひっ、ああっっ、んんんんぅ!!」

振動よりもコンマ早く聞こえた無機質な音に、体が警戒体制をとる、前に。

「バカ透、ふざけんなお前」
「さすが、反応早いねぇ斗真」
「車まで待てよ、せめて」

遠慮なくさらにパワーアップしてそれは動き出したんだ。

「……はぁ……っ、はぁ」

咄嗟に大きな掌に口を塞がれたおかげで。
なんとか道行く人々には気付かれずにすんだようだ。

「ライちゃん、すごいトロトロだね?」

「………ああ、今の?」
「イったよね、ライ?」



否定は、したいしするつもりもある。
だけど立ってる両足は地面に着いてるはずなのに感覚がないし、なぜだか全身の力が抜けたのか、斗真にしがみついてないとその場に立つことさえ困難だ。


「…………ったく、ほら」
「きゃぁっっ!?」

いきなりのお姫さまだっこ、には、道行く人々もびっくりだけど。
本人が一番、驚いてる。
だけどそれ以上に。

「………っ、っ」

歩く度に、振動が、ヤバい。




やっと車に着く頃には。
すでに半分、意識がふわふわと浮いてた。


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