第2章 新生活、開始!
「來」
「ん………」
あ。
また、だ。
振り向き様の無防備なその隙をたぶん狙って、彼は『また』あたしの口の中へと何かを流し込む。
吐き出す間を与えられずに。
すぐに口に入ってくるのは冷たいミネラルウォーター。
コクン、と、喉が動くのを、彼は満足そうに目を細めて見つめるのだ。
「…………今の、何」
喉へと右手を当てながら彼等を見上げれば。
「避妊薬だよ」
答えたのはにっこり笑顔の、とーる。
「え」
「妊娠されちゃ、困るから」
「………っ」
妊娠、て。
真顔で!平然と涼しく言わないでよ。
ってか。
そんなのなんで簡単に手に入るの。
だってそれって、医者の処方せん、必要なんじゃ。
「ん?」
不安そうに見上げるあたしと視線を合わせて、にっこり微笑むとーる、から咄嗟に視線を反らす。
「まじで嫌われたな、透」
それこそバックに『ガーンっっ』て、思い切り背負ってそうな勢いで青くなるとーるの後ろで、拳を口へと当てながら可笑しそうに笑うとーま。
「当分、我慢する」
「おお、任せとけ」
「……………」
わけのわからないじゃれあいに首を傾げながら耳を傾けていれば。
突如。
「!」
じゃれあいよろしく仲良く笑いあっていた、片割れ、とーまと不意に絡んだ視線。
それはすぐに。
人を舐め回すような、ねっとりとした視線へと変わり。
彼は妖艶に、妖しく、微笑んだのだ。