第2章 新生活、開始!
あたしの真正面へと移動してきた彼は、自分の人差し指にブラヒモを巻き付けながら、楽しそうに言ってのけたのだ。
「………っ」
駄目。
これ以上、無理。
羞恥に耐えきれずに首をふるふると横に振れば。
彼の右手が顎へとかけられて。
すぐに重なったのは彼の唇で。
その間にも、背中のホックが無遠慮に外される音。
「……ふぅ、んく……っ」
そのまま紐が下へとずらされ、重力によってそれは無惨にも滑り落ちた。
咄嗟に両手で胸を押さえたから、なんとか下着はつけている。
けど、自分の両手だけで支えてる不安定な状態に。
自然と涙が溢れてくる。
だけど。
「…………ぃや……っ」
唇を離された瞬間、抵抗する暇さえも与えられずに、彼によって両手は捕らえられ、簡単に下着は床へと落ちたのだ。
「いい眺め」
にこりと目を細めると、彼は少しだけ屈んで。
胸の突起へと、唇を寄せる。
「………ッ、ぅ……っん、」
「ここ、好き?昨日も感じてたよね?」
「し、らな……っ、ぃあッッ!!」
カリッ
って。
いきなり感じた痛みに、溢れていた涙が流れ落ちていく。
甘噛みされた胸の突起が、ジンジンと熱を持ちはじめて。
今度は同じ場所を、優しくぬるぬると舌が這う。
「んぅ……っ」
彼から顔を反らしながら、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「それさ?」
「ぇ」
聞こえた笑いともとれる、その声に。
閉じていた両目をあけて透を見下ろせば。
「ホントに嫌なときは怯えちゃだめだよ、ライ」
「え……」
「泣いて震えて怯えて。興奮材料にしかならないもん、それ」
首を傾げてにっこりと笑うとーるの言葉と、表情が全然合ってない。
違う。
はじめからこの人、笑ってなんかないんだ。
わざとあたしを、追い込んでるんだ。
「ねぇライ?」
「………ぁ」
「今さら止めないよ?」
穏やかな、口調で。
なつっこい、笑顔で。
だけど。
だけどこの人。
すごく、冷たい目、してる。
思わず絡んだ瞳の冷たさに、背筋がゾクリと震えた。