第19章 番外編 映画鑑賞はお静かに
「おまえさ、最近不安定すぎ」
「え」
もしかして。
それで、映画も。
ここも…………?
「別に相性とかどーでもいい。好きなやつ抱いて気持ちくないわけねーし。好きでもないやつならまぁそれなりだし」
…………それなりなあたり、気になるんだけど。
気持ち良くないわけじゃないって認めるんだ。
「ライちゃんだから、好きになったんだよ」
「…………」
「たりめーじゃん?」
うわ。
どーしよう。
また泣く。
目頭勝手に熱くなってく。
「泣いてんの」
揶揄いながら斗真の手のひらが頭を優しく撫でてくれて。
心地いい。
「ふたりが、慣れすぎなんだよ」
「えー慣れてなくはないけど」
「本気で俺たちが惚れたのは來、おまえだけだよ」
「…………っ」
ず!!るい!!
ずるい、こんなの。
こんなの。
「ライちゃん?」
「來?」
頭を撫でてくれる斗真の手に、自分の手を重ねて。
透に体を寄せて擦り寄れば。
ふたりの、声がハモる。
「帰りたい」
「え、あれ?まだ機嫌治んない?」
「違う」
不思議顔のふたりに。
勇気を出して一歩、踏み込んで。
唇に触れるだけのキスを、した。
「…か、かえり、たい」
「…………」
「…………」
真っ赤な顔を見られたくなくて俯いて。
再度、言葉にする。
一瞬の、間の後。
「…………仰せのとーりに?」
おずおずと顔を上げたあたしの視界に。
大好きなふたりの、笑顔がうつりこんだ。