第19章 番外編 映画鑑賞はお静かに
なに……。
なんで。
「また泣かれちゃ、たまんねーし」
「や、なんでしょ?」
な………っ。
なに、それ。
「顔、赤いよ?辞めない方が良かった?」
「………っ」
こいつら……。
絶対これ、わざとだ。
わざと、やってる。
「お前が望むなら、続きしてやるけど?」
「━━━━しないッッ!!」
絶対こんなの、いいなりになんかなるもんか!!
「ふぅん」
「……あっ、そ」
楽しそうに目を細めるふたりをおいて、勢い良くトイレを飛び出した。
なんなのなんなの。
なんなの!?
ばかなのっ?
頭の中、そればっか!!
たまには普通のデート、出来ないわけ?
あたしは楽しみにしてたのに。
ふたりと一緒にデートなんて、誘ってくれて、嬉しかったのに。
「來」
「ライちゃん」
後ろから、同じ高さの声が、かぶる。
「ランチ行こう?機嫌直してよ。俺もライちゃんとデートしたいんだよね。楽しく」
「………」
「いつまでも不細工な面してんならおいてくぞ」
「………」
「ほら」
ふたりの掌が、差し出されて。
「………オムライス、と、ケーキ」
「あ?」
「あと、パフェが、いい」
渋々ふたりの掌を、とれば。
「仰せの通りに」
ふ、と。
まぶしいくらいに太陽まで背負っちゃってる、透の笑顔が降ってきた。