第19章 番外編 映画鑑賞はお静かに
「………かわいく出来たね、えらいえらい」
「は……っ、ぇ?」
一際大きく襲い来る倦怠感に、椅子へと体を沈めれば。
笑顔で頭をいいこ、いいこ、と撫でる透。
「指だけで良くこんななるな、お前」
びしょ濡れの右手をわざとらしく広げなから、斗真は躊躇なく指先を舐めとっていく。
「と……っ!!、ま…」
羞恥に思わずあげそうになる声を、隣から伸びてきた掌に遮られた。
「しー、ね?」
「俺は別に構わねーよ?見せつけてやれば」
「ええ?ライちゃんのいろんなかわいい声とか場所とか、お兄ちゃんは見せちゃっていーんだ?」
「………」
「いーんだ?」
「………っくねーよ」
「ふ……っ、んん━━━━ッッ」
なにやら頭上で交わされる仲の良い(?)ケンカは、突然目の前の斗真に唇を強引に奪われたことで終了し。
かわりに。
また、今度は後ろから抱き締めるように透が胸を、愛撫する。
首の後ろとか、耳、とか。
わざとらしく舌を這わすことももちろん忘れずに。
待って。
ついていけない。
映画、見に来たんだよね?
確か。
何これ。
なんなの。
どーなってんの?
「………他の男余所見とか、余裕あんじゃん」
「は?」
チラリと、横目で映画のスクリーンへと視線をうつせば。
機嫌悪そうに斗真が唇を、離した。
「自分でちゃんと口、塞いどけよ?」
「ちょ……っ、ぅそっ」
悪魔みたいに怖い微笑みを向けた、あと。
ガバッと足が開かれて。
片足がひじ掛けへと掛けられた。
思わずビクン、て、体が跳ねる。
だって。
嘘でしょ………?
「嘘じゃねーし」
「ライちゃん、ちゃんと声我慢しててね?」
「っ!!」
無理。
無理無理無理無理っ!!
唇を噛み締めながら、首を左右へと思い切りふるけど。
そんなことはお構いなしに。
斗真の唇は、下着を横にずらしたままでさっきまで指が入っていたその場所へと、キスを、した。