第15章 ゲームオーバー
「知ってる」
━━━━……ぇ
今、なんて?
「お父さんと血、繋がってないのも知ってるよ」
「━━━」
「調べた」
調べた。
そう、そ、っか。
簡単に調べられちゃうよね、ふたりなら。
「父親に何されてたのかも、知ってる」
「………っ」
「ごめんライちゃん、嘘だよ?」
「ぇ」
「バイバイなんて、しないから」
「………?」
「俺たちと、『俺』、と、お前はいたくないかと思ったんだ」
「斗真と?なんで?」
「うん、だからもう、いいよ」
「透?」
「ごめん、嫌なこと思い出させたね」
優しく透の指先が、触れて。
初めて泣いてたことに気がついた。
「悪かったな」
「………斗真はね、ライちゃん。キミが出ていくの、怖かったんだよ」
「出てく?」
「お母さん、大事でしょう?」
「うん」
「勝手にからだの一部奪われて、憎くない?」
「ぇ」
「もしかしたら命を落とす危険も、あったかもしれないのに」
いの、ち。
「…………」
そう、そうだ。
「………お母さん、たぶんあたし、恨んでた」
お母さんも、お父さんも。
たぶん憎かった。
勝手に夢の世界に逃げ出したお母さんも。
酷いことした、お父さんも。
『知ってて』、助けてくれなかったお母さんも。
ほんとはすごく憎かったよ。
それでも。
お父さんをまだ愛してたなら、あたしはなんのために犠牲になってきたのかなって思った。
お母さんのために、耐えたのに。
小さな兄妹を守るために、お母さんの代わりになろうって頑張ってきたのに。
あたしはなんのために犠牲になってきたのかな。
そう、思ったよ。
だけど。
だけど。
「偶然でもなんでも、お母さんがふたりに引き合わせてくれたなら、それはたぶんお母さんがあたしに運命を運んで来てくれたんだって今なら思える」
偶然なんかじゃ、なくて。
これはもう、たぶん。
「お父さんがあたしのお父さんじゃなくて、今なら良かった、って、心から思える」