第15章 ゲームオーバー
「欲張る覚悟、したとこ悪いけどこればっかりはどうにもできねんだわ」
「約束どーりちゃんとお金は振り込むから」
バイバイ、なんて。
笑って透がわざとらしく手を振る。
だけど。
あたし、この顔知ってる。
「………っ、じゃ、ない」
「?」
「血、繋がってない」
「は?」
「あたし、お父さんの子供じゃないもん!!」
『來、ごめんね』
『最後まで迷惑かけて、ごめん』
『お母さん?』
『弱いお母さんで、ごめんね』
バイトの帰り道。
そんな会話で一方的に切られた電話。
胸騒ぎがして。
大急ぎで帰ったら。
アパートの前には救急車が止まってて、弟たちが泣いていた。
「あたし、お父さんとは血繋がってない」
お母さんが自殺する、前の日。
『お母さん、あたしのお父さんって誰?』
なんとなく聞いた、疑問。
小さな頃からお父さんと血が繋がってないことは知ってたし、それが理由でたぶん、お父さんはあたしに手を挙げてたんだろーな、とも冷静に考えられる歳になったんだと思う。
だから決して深い意味なんかなくて。
まさかこのたった一言でお母さんがあんなに追い詰められるなんて思いもよらなかった。
「お願い、離れていかないで」
もう誰も失いたくないから。
「お金いらないから」
バイバイなんて、やだ。
これ以上、あたしから奪わないでよ。
あたしの居場所、奪わないで。
お父さんが、お父さんじゃなくたって別にどーでもいい。
元から好きじゃなかったもん。
だけどそのたった一言でお母さんを追い込んだのは事実。
そのせいで。
お母さんが、母親の責任とやらを果たせない弱い人間だっただけの話でも。
結果あたしがみんなから母親も、生活も奪った。
だから頑張って頑張って、みんなの生活守りたくて。
頑張って。
頑張って。
生きるために、家族を守るために。
今まで必死に足掻いてきた。
だけど。
疲れた。
「………お願い……」
せっかく見つけた、あたしの居場所。
取らないで。