第13章 アイスキャンディ
「な、に……」
なんか今、すごい怖いことさらっと言わなかった?
すごいこと、あたし言われなかった?
一瞬ゾッとしたのも事実。
血の気が引いて、足元から冷気が這い上がって来たのも事実。
その事実は、あたしの体を一歩、さらにもう一歩ってゆっくりと後退させた。
「……來」
ビクン、て。
斗真のうめくような低い声に体が跳ねる。
「透に散々言われてたよな?『怯えるな』って」
「ぇ」
「それ、お前のその顔。すっげーくる」
「……?」
楽しそうに笑って。
だけどどこか皮肉気に。
斗真は笑いながらあたしの左手を玄関へと押さえつけた。
「と、ま?」
「怖い?」
押さえつけた右手の指先に唇を寄せて、わざと見せつけるようにそれを1本1本、丁寧になめとっていく。
「……っ」
だけどたったそれだけのことでも、その次を期待して悦ぶ体。
「泣くの早いって」
指を舐められてるだけなのに。
時々見え隠れする真っ赤な斗真の舌がすごく官能的で、勝手に体温が上がっていく。
それは一気に顔面の体温までも上昇させ、涙腺までも崩壊させるのだ。
「來」
「………」
俯いていた顔をゆっくりと、挙げれば。
「………『いい子、ご褒美あげる』」
「ぇ」
今の。
「と、る?」
「さぁ?どっち。当ててみて」
「………な、んん!?」
『何言ってんの?』
抗議のために開いた唇から、ぬるっとした感触の舌が強引に入り込んで。
吸い上げながら口内を蹂躙していく。
左手を押さえつけられてなければ、斗真の足が、両足の間に入り込んでなければ。
すぐさまあたしは冷たい床の上に崩れてた。