第13章 アイスキャンディ
「いや、いいいいっ。自分で食べれるよ?」
「駄目、俺が食べさせたいの」
「透?」
「ん?」
「キャラちがくない?」
「そーぉ?好きなコには基本、優しいよ?俺」
『好きなコ』、のフレーズに。
ボンっって、顔から火が出たかも。
「はい、あーん、して?」
ふー、ふー、してから。
目の前に差し出された美味しそうな匂いのするそれ。
この状況で食べない選択肢、ないと思うの。
「美味しい?」
「……です」
「ん、良かった」
正直味なんて良くわかってない。
いきなり出くわしたこの激甘なこの状況だけで。
胸やけでも起こしそうなくらいにお腹いっぱいだ。
透も斗真も。
いつも理由のない行動なんてしない。
わかってたはず、なのに。
人生初めて到来した最大のモテ期に。
たぶんいろんなものが麻痺しちゃってたんだ。
普通に考えたらわかるはずなんだ。
透がこんなにあたしを甘えさせる理由。
斗真が、この場にいない理由。
3ヶ月も一緒にいたのに、疑問にすら思えないあたしは。
たぶん本当に大馬鹿者なんだと思う。