第12章 『すき』『きらい』
鋭く睨み付ける斗真に首をすくめながらも。
透はそのまま口を閉じた。
「あのまま、俺だけのものにしよーと思ったのも事実だ。來が俺を選んでたらたぶん、そーしてた」
「………」
「お前言ったじゃん、『もともとひとつだったはずなのに、なんでどちらかを選ばなきゃいけないの』って」
「………」
「來がこーゆーやつだから、透はたぶんあんなことしたんだよな?來がどっちも選ばないの、わかってたんだろ?俺たちふたりで戻る、って、確証があったわけだ」
「……どーゆーこと?」
「自分の評価落として、俺を選ぶよう仕向けた。俺が、來をすきなの、知ってたから」
え。
「その上で、透は俺も來も試したんだよ。自分の欲に走るか。それとも自分(透)を取るか。來なら絶対、どちらも選べないのわかった上で」
「かいかぶりすぎだよ。絶対の確証なんてないって」
「タヌキだなほんと。これまでいっつも、お前の手駒どーりに人生進んでっだろ?」
「偶然だってば」
「嘘つけ」
「ねぇライちゃん」
ポカンとしてるあたしへと、視線を合わせて。
透は子供をあやすようにゆっくりと、口を開いた。
「斗真はけっこうガキだから、たぶん俺がキミを抱けば斗真は嫉妬して暴走するよ?」
「ぇ」
「だけど斗真も、キミを一人占めする気はないみたいなんだ。俺もね、キミがすきだから」
え。
「だからその度に、斗真の暴走を受け止めるのはライちゃんってことになるの。わかる?」
にこやかにゆっくりと、心地よく耳に届けられる音はまるで音楽みたいで。
意味まで理解するのはけっこう困難だ。
「あのね、だから、逃げるなら今だよ?って、チャンスをあげてるつもりなんだけど」
「……にげ、る?」
「俺らふたりとも、キミがすきで。だけどキミはひとりしかいなくて。それでもライちゃんは、俺たちを受け入れられるの?」