第12章 『すき』『きらい』
パタン、て。
振り向くことなくドアの向こうに消えていく斗真の姿。
『わかった』
低い声、だった。
斗真が。
透が。
好き。
わかんない。
どっちも好き、は、結局どっちも好きじゃないってことになるし。
第一好き、って気持ち自体、あたしにはまだよくわかんないのに。
それは答えなきゃいけないこと?
今すぐに、答えを出さなきゃいけないこと?
あたしが。
家族がここにいるために必要なことなら。
あたしはどちらかを選ばなきゃいけないんだ、たぶん。
だけどそんな理由で選んじゃいけない気持ちがあるのも、事実。
あたしは結局、何がしたいのかな。
こんなときあたしは。
どーすればいい?
ねぇお母さん。
話したいこと、いっぱいあるのに。
いつまで寝てんの。
あたしにはもう、わけわかんないよ。
お母さんはあたしたちのために結婚したんだよね?
お金のために、非難されても結婚したんでしょ?
それってさ。
そこに『すき』、って気持ち、あった?
ねぇ。
お母さん。
答えてよ。
「____ッッ」
泣くことさえもおこがましいなんて、知らなかったよ。
こんなに辛くて苦しい気持ちが存在したなんて。
知らなかった。